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2024年08月10日

せっかく矯正したのに後戻りした!その対処方法と治し方は?

長い年月をかけて頑張って直した歯並び。
決して安くはない矯正治療をした後に、後戻りしてしまったらかなりショックですよね。
矯正治療後の後戻りは一番起こりやすいトラブルで、その原因と対策をしっかり理解していれば、矯正治療後の後戻りを防ぐことができます。
この記事は、矯正治療後の後戻りの原因とその対策について詳しく説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。

基礎知識~矯正で歯が動く仕組み~

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歯が動く仕組み 

矯正治療では、どのように歯を動かすのでしょうか?これは矯正後の後戻りを理解するのに必要な知識です。

1. 矯正力の作用

  • 矯正力: 矯正装置(ブラケット、ワイヤー、エラスティックゴムなど)を使って歯に持続的な力を加えると、歯はその力に引っ張られ、新しい位置に移動しようとします。この力は、弱くかつ持続的に加えれる必要があり、歯にかかる負担を最小限に抑えつつ、顎の骨の変化を促す程度に調整されています。

2. 歯根膜の役割

  • 歯根膜とは: 歯根膜は歯と歯槽骨(歯が埋まっている骨)を結びつける薄い膜のことをいいます。コラーゲン線維が主成分です。歯根膜には血管や神経があり、歯が移動する力を感知します。
  • 力の感知: 歯に力が加わると、歯根膜がその圧力を感知し、骨のリモデリング(再形成)を引き起こします。

3. 骨のリモデリング(再構築)

  • 骨の吸収と形成: 矯正力が加わることで、歯が動く方向の骨は圧迫され、逆方向では引っ張られます。
    • 圧迫側(骨吸収): 圧迫側の歯槽骨では、骨が「破骨細胞」という細胞によって吸収されます。これにより、歯が新しい位置へと移動するための空間ができあがります。
    • 引っ張る側(骨形成): 引っ張る側では、「骨芽細胞」という細胞が新しい骨を形成します。これにより、歯が移動した先の位置が安定し、しっかりと新しい骨に固定されます。

4. 細胞と分子の作用

  • 破骨細胞と骨芽細胞: これらの細胞は、歯が移動する際の骨の吸収と再生の主役です。破骨細胞が古い骨を吸収し、骨芽細胞が新しい骨を形成することで、歯が歯槽骨を移動します。
  • シグナル分子: 情報を伝えるシグナル分子が、細胞間での情報伝達を行い、適切な骨の吸収と形成を促進します。

5. 歯の移動

  • 段階的な移動: 歯の移動は非常にゆっくりとしたスピードで、通常は1ヶ月に1ミリメートル以下の速度で移動します。このスピードは、骨のリモデリングが十分に行われるために必要なものです。

6. 矯正の調整と安定化

  • 定期的な調整: 矯正治療中は、定期的に歯科医師によって装置の調整が行われ、力の加減や方向が適切に管理されます。これにより、理想的な歯並びが徐々に形成されます。
  • 安定化(リテーナー): 矯正治療が完了した後、歯はリテーナーを使用して新しい位置に保持されます。これにより、移動した歯が再び元の位置に戻る後戻りを防ぎます。

7. 矯正治療後の骨の安定化

  • リモデリングの完了: 歯が最終的な位置に固定された後も、骨のリモデリングはしばらく続きます。この間、リテーナーを使用して安定させることが重要です。骨が完全に再形成されるまで保定期間を経て、最終的な歯の位置が確定します。

なぜ後戻りが起こる?

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後戻りが起こる原因 

矯正治療後に歯が後戻りするとは、矯正治療によって移動した歯が元の位置やそれに近い位置に戻ろうとする現象です。せっかく動いた歯はどうして戻ろうとするのでしょうか?

1. 歯根膜と歯槽骨のリモデリングの未完了

矯正治療で歯が移動すると、歯を支えている歯槽骨と歯根膜が再構築される必要があります。歯が移動する際には、移動方向の歯槽骨が吸収され、移動後の位置には新しい骨が形成されます。しかし、このリモデリングが完全に終わるには時間がかかります。矯正治療が終了した直後は、歯槽骨がまだ完全に再構築されていないことがあります。この状態で固定が不十分だと、歯は元の位置に戻ろうとする力が働きます。

2. 歯根膜の弾性復位力

歯根膜はコラーゲン線維を多く含んでおり、弾力性があります。歯が移動した後、歯根膜は元の位置に戻ろうとする性質があります。この力が働くことで、矯正後の歯が少しずつ元の位置に戻ることがあります。また、歯根膜にかかる応力が完全に解消される前に固定が不十分だと、歯はその応力に引っ張られる形で後戻りを起こすことがあります。

3. 咬合力の影響

矯正治療後に歯の咬合(噛み合わせ)が変わると、新しい咬合に適応するために歯が微妙に動くことがあります。この動きが後戻りと感じられることもあります。日常生活の中で、舌や唇、頬の筋肉が歯にかける力も影響します。特に舌で歯を触ったり、強く歯に押し付けられる習慣があると、矯正後に歯が動いてしまうことがあります。

4. 遺伝的・成長要因

一部の人は、歯が元の位置に戻りやすい遺伝的傾向を持っています。この場合、矯正治療後に特に注意が必要です。未成年など若年者の場合、矯正治療後も顎や顔の骨が成長し続けるため、その成長が歯の位置に影響を与えることがあります。成長によって咬合が変わり、後戻りが起こることもあります。

5. 矯正治療後の保定装置の使用

矯正治療後に、歯を新しい位置に保持するためにリテーナー(保定装置)が使用されます。リテーナーは、歯が再び動かないように固定する重要な役割を果たします。リテーナーを適切に使用しなかったり、早期に使用をやめてしまったりすると、歯は元の位置に戻りやすくなります。特に治療直後の数か月から1年はリテーナーの使用が非常に重要です。

6. 歯列の安定性と長期管理

人の歯は生涯にわたって微妙に移動し続けます。これは矯正治療を行ったかどうかに関係なく、歯列が様々な理由で自然に変化する現象です。矯正治療後の後戻りも、この自然な歯の移動の一環だったりします。

矯正治療後の後戻り防止策

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後戻りしないために

矯正治療後の後戻りを防止するためには、いくつか守らなければいけないことがあるので一緒に確認しましょう。

1. リテーナーの適切な使用

  • リテーナーの種類: リテーナーには大きく分けて、固定式(歯の裏側にワイヤーを貼り付けるタイプ)と取り外し式(透明なプラスチック製のマウスピースやワイヤーで歯を保持するタイプ)の2種類があります。どちらも歯を新しい位置に固定するために重要です。
  • 装着期間: 矯正治療直後は、リテーナーを24時間ずっと装着することが推奨されます。少なくとも矯正治療をした期間中、数ヶ月から数年経過した後は、夜間のみ装着する形に移行することが一般的です。しかし、個々のケースによって異なるため、の指示に従うことが大切です。

2. 口腔習癖の改善

  • 舌の位置と動き: 舌で歯を押す習慣や、舌が通常の位置よりも前にある「低位舌位」などのくせがあると、後戻りのリスクが高まります。これを改善するために、口腔筋機能療法(MFT)などを通じて舌の位置や動きを正しくすると予防ができます。
  • 咬合の習癖: 歯ぎしりや食いしばりなどの習慣がある場合、それらを改善するためのナイトガード(夜間用のマウスピース)を使用すると歯に過度な力が加わることを予防できます。

3. 定期的な歯科検診

矯正治療が終了した後も、定期的に歯科医師や歯科衛生士による検診を受けることが重要です。通常は、治療後1~3ヶ月ごとに定期検診を受け、その後も口腔管理を徹底します。検診時には、歯の位置や咬合の状態が安定しているかどうかを確認します。万が一検診で後戻りが発見された場合は、早期に対処することで大きな後戻りを防ぐことができます。必要に応じてリテーナーの調整や再装着が行われます。

4. 良好な口腔衛生の維持

  • 歯磨きとフロスの徹底: 口腔内の清潔を保つことで、歯周病や虫歯を予防し、歯肉や歯槽骨の健康を維持します。これにより、歯の位置が安定しやすくなります。
  • 定期的なクリーニング: 歯科医や歯科衛生士による定期的なクリーニングも、後戻り防止に役立ちます。特に、歯肉の健康状態を維持し、歯周病を防止することで、歯の安定性を保ちます。

5. 健康的な生活習慣の維持

  • バランスの取れた食事: 骨の健康に必要な栄養素(カルシウム、ビタミンD、マグネシウムなど)を含む食事を摂ることで、歯槽骨の強化が期待できます。
  • 適度な運動: 適度な運動は、全身の血行を良くし、口腔内の組織の健康にもつながります。

6. 習慣的な監視

  • 自身でのチェック: 自分で定期的に歯の位置や咬合の状態をチェックし、何か変化があればすぐに歯科医に相談することも重要です。
  • リテーナーの状態確認: リテーナーが破損したり、しっかりはまらなくなった場合は、すぐに歯科医に相談し、修理したり、新しいリテーナーの作製を行います。

もし後戻りしてしまったら…?

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後戻り後の治療  

矯正治療後に後戻りが起こってしまった場合、早期に対処することが重要です。

1. 歯科医師への相談

後戻りを感じたら、できるだけ早く矯正治療を担当した歯科医師に相談しましょう。早期に対応することで、症状の進行を抑えることができます。

2. リテーナーの再装着

もしリテーナーをまだ持っている場合、再びリテーナーを装着することで、後戻りを抑えることができることがあります。リテーナーがきつく感じる場合や噛み合わせなどに違和感を感じた場合は、歯科医師に調整をしてもらいましょう。しかし、リテーナーがしっかりはまらず、後戻りが進行している場合、現在の歯の位置に合わせた新しいリテーナーを作製する必要があることがあります。

3. 再矯正治療

  • 部分的な再矯正: 後戻りの程度が軽度であれば、部分的な矯正治療を行うことで、歯を再び正しい位置に戻すことができます。
  • マウスピース型矯正装置: インビザラインなどの透明なマウスピース型矯正装置を用いることで、目立たずに後戻りを矯正することが可能です。
  • 後戻りが深刻な場合: 後戻りが進行しており、歯列全体に影響を与えている場合は、再度全体的な矯正治療を行うことが必要になることがあります。この場合、従来のワイヤー矯正やマウスピース矯正が選択肢となります。
  • 治療計画の見直し: 再矯正を行う際には、最初の治療とは異なる場合があります。例えば、より長期間の保定や、口腔習癖の改善が治療計画に含まれることがあります。

5. 生活習慣の改善

舌で歯を押す癖や、歯ぎしりなどが後戻りの原因である場合、それらの習慣を改善することが重要です。歯科医師や歯科衛生士から習癖改善のためのアドバイスを受けることができます。

6. 長期的な保定

  • 保定期間の延長: 後戻りを経験した場合、リテーナーの装着期間を延長することが推奨されます。夜間だけでなく、日中もリテーナーを装着することが必要になることがあります。
  • 固定式リテーナーの使用: 取り外し式のリテーナーが十分に効果を発揮しない場合、固定式リテーナーを使用することも一つの選択肢です。これは、歯の裏側にワイヤーを固定する方法で、取り外しができないため、つけ忘れを防ぐことができ、効果的な長期保定が可能です。

後戻りしてしまっても大丈夫

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安心して相談してください 

患者さんの中には、後戻りしてしまったことを先生に怒られるんじゃないか…と不安に思い、なかなか相談できない方がいると思います。言いづらいお気持ちはわかりますが、せっかく矯正して治した歯並びを長期的に管理していきたいという気持ちは私どもも同じです。
先生に直接言いづらければ、歯科衛生士のほうで親身にお話をお伺いさせていただきます。
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