和光市デンタルオフィス
コラム・ブログ

COLUMN・BLOG

2025年03月30日

インプラントができない?治療の可否を左右する条件とは?

インプラントは失った歯を補う優れた治療法ですが、誰でも受けられるわけではありません。「インプラントは無理」と言われた方でも、適切な治療を受けることで可能になるケースもあります。この記事では、インプラントができない主な条件と、その対処法について詳しく解説します。

インプラントができない可能性があるケースとは?

顎の骨が不足している

和光市 歯医者 和光市デンタルオフィス インプラントできない人 
顎の骨が不足している 

インプラント治療では、顎の骨がしっかりとした土台の役割を果たします。インプラントは、歯の根の代わりに人工のチタン製ネジを顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する仕組みです。このため、顎の骨が十分な量と密度を持っていないと、インプラントがしっかりと固定できず、安定性が失われるリスクがあります。

顎の骨が不足していると、以下のような問題が生じるため、治療が難しくなるのです。

まず、インプラントの固定が不十分になるという点が挙げられます。インプラントは顎の骨と結合(オッセオインテグレーション)することで安定しますが、骨の厚みや高さが不足していると、この結合がうまくいかず、インプラントがぐらついたり脱落するリスクが高まります。

次に、インプラントの露出リスクが高まることも問題です。骨が薄い状態でインプラントを埋め込むと、インプラントの一部が歯ぐきから露出してしまい、見た目が不自然になるだけでなく、感染リスクも高まります。

さらに、周囲組織へのダメージのリスクもあります。特に上顎の骨が薄い場合、インプラントが上顎洞(副鼻腔)に近すぎる位置に埋め込まれると、上顎洞を傷つけてしまう可能性があります。また、下顎では、骨が薄いと下歯槽神経に近づきすぎ、麻痺やしびれのリスクが高まります。

では、なぜ顎の骨が不足してしまうのでしょうか。その原因として代表的なのが、歯の喪失後の放置です。歯を失った状態が続くと、噛む刺激が伝わらなくなるため、次第に骨が痩せていきます。特に、抜歯後に長期間放置した場合は、骨の吸収が進んでしまう傾向があります。

また、歯周病も大きな原因のひとつです。歯周病が進行すると、炎症によって顎の骨が破壊されるため、骨が痩せてしまいます。重度の歯周病を放置していた場合は、骨の量が大幅に減少しているケースが少なくありません。

さらに、加齢も影響します。年齢を重ねると、自然と骨の密度が低下するため、顎の骨が痩せやすくなります。特に、入れ歯の使用が長い方は、入れ歯が顎の骨を圧迫し、さらに骨の吸収が進むことがあります。

これらの理由から、顎の骨が不足している場合はインプラント治療が難しくなるのです。しかし、骨が不足している方でも「GBR」と呼ばれる治療を行うことで、インプラントが可能になるケースも多いため、まずは歯科医院で診断を受けることが大切です。

重度な歯周病である

和光市 歯医者 和光市デンタルオフィス インプラントできない人
和光市 歯医者 和光市デンタルオフィス インプラントできない人

インプラント治療において、重度の歯周病がある場合は治療が難しいとされる理由には、いくつかの重要な要素があります。

まず、歯周病とは、細菌感染によって歯を支える「歯周組織」が破壊される病気です。歯ぐきの炎症だけでなく、進行すると歯を支えている顎の骨(歯槽骨)が溶けてしまうのが特徴です。インプラント治療では、この顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込んで固定するため、骨がしっかりと存在しないとインプラントが安定せず、脱落のリスクが高くなります。

さらに、歯周病が重度になると、口腔内には大量の細菌が存在している状態になります。この状態でインプラントを埋入すると、インプラントの周囲に細菌が侵入しやすく、治療後に「インプラント周囲炎」という炎症が起きるリスクが高まります。インプラント周囲炎は、インプラントを支えている骨が再び溶け、最終的にインプラントが抜け落ちてしまう深刻な問題につながることがあります。

また、重度の歯周病の方は、免疫機能の低下組織の回復力の低下が見られることもあります。インプラント手術後は、顎の骨とインプラントがしっかり結合する「オッセオインテグレーション」という過程が重要になりますが、回復力が低下していると、この結合がスムーズに進まず、インプラントが安定しにくくなってしまいます。

こうした理由から、重度の歯周病がある場合には、まず歯周病の治療を優先し、口腔内を清潔で健康な状態に整えてからインプラント治療に臨むことが重要になります。しっかりとした歯周病治療と適切なメンテナンスを行うことで、将来的にインプラントが成功する可能性を高めることができます。

全身疾患がある

和光市 歯医者 和光市デンタルオフィス インプラントできない人
全身疾患がある 

インプラント治療では、患者さんの全身の健康状態が非常に重要です。全身疾患がある場合、インプラント治療が難しくなるのは、身体の状態が手術の安全性や治療の成功率に大きく関わるためです。

例えば、糖尿病がある場合、血糖値がコントロールされていないと、体の免疫機能が低下し、傷の治りが遅くなる傾向があります。インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込む外科手術を伴うため、傷口の治癒が遅れると感染リスクが高まり、インプラントの定着がうまくいかない可能性があります。特に、血糖値が安定していない方は、インプラントと顎の骨がしっかり結合する「オッセオインテグレーション」という重要なプロセスが妨げられることがあります。

また、高血圧の場合、治療中の緊張や痛み、麻酔の影響で血圧が急上昇し、危険な状態になるリスクがあります。特に、重度の高血圧がコントロールできていない場合、心筋梗塞や脳卒中などの重大な合併症を引き起こすリスクが高くなるため、安全な治療が難しくなります。

さらに、骨粗しょう症の患者さんは、骨の密度が低下しているため、インプラントを埋め込む土台となる骨が十分に強度を保てない場合があります。特に、骨粗しょう症の治療でビスフォスフォネート系薬剤を服用している場合は、顎の骨の血流が悪くなり、インプラント手術後に「顎骨壊死(がっこつえし)」という重篤な状態を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。

そのほか、心疾患や自己免疫疾患など、免疫や血流に影響を及ぼす疾患も、術後の感染リスクやインプラントの安定性に悪影響を与える可能性があります。

ただし、これらの疾患があるからといって、必ずしもインプラント治療ができないわけではありません。病状が安定しており、主治医の許可が得られれば、安全にインプラント治療を行えるケースも多くあります。そのため、患者さんご自身が全身の健康状態について正確に伝え、歯科医師と主治医が連携して治療計画を立てることがとても大切です。

喫煙習慣がある

和光市 歯医者 和光市デンタルオフィス インプラントできない人
喫煙習慣がある 

喫煙は血管を収縮させ、血流を悪化させる働きがあります。インプラント治療では、手術後にインプラント体と顎の骨がしっかりと結合する「オッセオインテグレーション」という過程が非常に重要です。この過程には、血液が十分に循環し、酸素や栄養が骨に行き渡ることが欠かせません。喫煙によって血流が滞ると、骨の再生や治癒が遅れ、インプラントが骨に安定するまでに悪影響を及ぼします。その結果、インプラントがぐらついたり、最悪の場合は脱落してしまうリスクが高まるのです。

さらに、タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があり、これも血行不良を引き起こします。加えて、一酸化炭素が血液中の酸素濃度を低下させるため、傷の治りが悪くなり、感染リスクが高まることも知られています。インプラント手術では歯茎を切開するため、術後の治癒が遅れることで傷口の感染や炎症が悪化し、結果としてインプラントの失敗につながる可能性があります。

さらに、喫煙者の口腔内は乾燥しやすく、唾液の分泌量が減少しがちです。唾液には細菌の繁殖を抑える作用があるため、分泌量が減ることで口腔内の衛生状態が悪化し、インプラント周囲炎という歯周病に似た炎症を引き起こすリスクも高まります。インプラント周囲炎が進行すると、せっかく埋め込んだインプラントが脱落してしまうこともあります。

これらの理由から、喫煙習慣がある方にはインプラント治療が難しいとされるのです。しかし、禁煙に取り組むことでリスクを大幅に軽減し、インプラント治療が可能になる場合もあります。治療前後の一定期間は禁煙するよう指導されることが多いため、インプラントを希望する方は、まず歯科医師に相談し、禁煙のタイミングやサポート方法についてアドバイスを受けると良いでしょう。

強い歯ぎしり・食いしばり癖がある

和光市 歯医者 和光市デンタルオフィス インプラントできない人
歯ぎしり食いしばり 

インプラントは天然の歯と異なり、歯根膜が存在しません。歯根膜とは、歯の根と顎の骨の間にある薄い膜で、クッションのような役割を果たします。天然の歯であれば、歯ぎしりや食いしばりの際にかかる過剰な力を歯根膜が吸収し、衝撃を和らげてくれます。しかし、インプラントにはこのクッション機能がないため、過度な力が直接インプラント体(人工歯根)やその周囲の骨に伝わってしまいます。

特に、歯ぎしりや食いしばりの力は、通常の咀嚼時の数倍にも達することがあります。この強い圧力が継続的にかかると、以下のリスクが高まります。

  • インプラント体の破損:インプラントは非常に耐久性のある素材で作られていますが、過剰な負荷が続くと、ねじ部分が緩んだり、最悪の場合は破損することがあります。
  • インプラントの脱落:過度な圧力がインプラント周囲の骨に負担をかけ、骨が吸収されてしまうことで、インプラントが抜け落ちる可能性があります。
  • 上部構造(人工の歯)の破損:インプラントの上に取り付けるセラミックの歯や被せ物が、ひび割れや欠けを起こしやすくなります。

また、歯ぎしりや食いしばりは無意識のうちに起こることが多く、特に就寝中はコントロールが難しいため、患者さん自身が症状に気づいていないケースもあります。そのため、インプラント治療前の診断で、歯ぎしりや食いしばりの兆候が確認された場合、事前に対策を講じることが重要です。

治療の際には、マウスピース(ナイトガード)の装着や、噛み合わせの調整を行うことで、インプラントへの負担を軽減し、成功率を高める工夫が可能です。歯科医師に正確な診断をしてもらい、自分の癖に合わせた対処を行うことが、インプラントを長持ちさせるための重要なポイントになります。

「インプラントは無理」と言われても諦めないで!

一度「インプラントができない」と診断されても、他の歯科医院で治療が可能になるケースもありますので、セカンドオピニオンをぜひ当医院でご検討ください。また、本当にインプラントが難しい場合でも代替えの治療がいくつか存在します。次回は代替え治療についても詳しく説明しますのでお楽しみに!!